2014年12月2日火曜日

衆院選2014 教育・子育てマニフェスト比較 ⑭子どもの権利・尊厳

信州大学教育学部「比較教育学演習」の授業で、第47回衆議院議員選挙の各党のマニフェストから、教育と子育てに関する政策をまとめました。

子どもの権利・尊厳

自由民主党
・虐待を受けた子供など保護を必要とする子供の早期発見や増加への対応、家庭的な環境で養育できる体制づくりを進めます。

民主党
・いじめ防止対策推進法の厳正な運用、「体罰等防止法」の制定を図ります。
・子ども虐待防止のため、さらなる支援を検討します。通学の安全

公明党
②いじめ・不登校対策
いじめ防止対策推進法等を踏まえ、いじめの未然防止や早期発見・対応等の一層の体制整備に取り組むとともに、インターネット上で行われるいじめへの対応や「いじめは悪」「いじめる側が悪い」という概念を学校現場で徹底する、いじめ防止教育を推進します。
・また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、養護教諭、児童支援専任教諭等の配置拡充を図り、いじめなどで悩む子どもたちが相談しやすい環境を整えるとともに、不登校支援施設・機関等への支援を拡充し、不登校の子どもたちが学びを安心して再開できる環境づくりに取り組みます。

日本共産党
▼いじめも体罰もない学校を
・いじめのない学校と社会を
私たちは、一昨年11月28日に、「『いじめ』のない学校と社会を――日本共産党の提案」を発表し、各地で懇談・対話を重ね、いじめや体罰問題のシンポジウムを開いてきました。被害者や関係者の声を正面から受け止め、①目の前のいじめからかけがえのない子どもの命と心身を守りきるとりくみ、②根本的な対策として、いじめの深刻化を教育や社会の問題ととらえ、その改革をすすめるとりくみを進めます。
・学校から体罰をなくします
肉体的な苦痛や恐怖で子どもを服従させることは、成長途上の子どもたちの体だけでなく、心に複雑で深い傷を残します。法律で明確に禁じられているにもかかわらず、少なくない学校で教員による体罰・暴力がいまだにあることは、日本の教育の重大な欠陥です。ところが自民党など政界の一部には、体罰・暴力を容認する潮流があります。自民党の国会議員は文部科学大臣政務官として、体罰による自殺事件があった大阪にわざわざ出かけ、「ありうる体罰とそうじゃない体罰の線引きが必要」と発言し、大きな問題となりました。日本共産党はこうした風潮を許さず、なぜ体罰がいけないのか、多くの人々と根本から考えあい、学校から体罰・暴力をなくすために全力をつくします。
▼不登校の子どもの学びと自立を温かく支援します
・不登校が11万人を超えているのは、日本の学校がいぜんとして息苦しい場となっていることを示しています。競争主義や管理的な社会や教育制度にこそ問題があるわけで、不登校を本人や家庭の責任ととらえることはまちがいです。むしろ子どもが安心して過ごせる代替え的(オルタナティブ)な場が必要になっています。安心できる応答的な人間関係、創造的に学べる教育が保障されることが大切です。そうした場は、学校教育にもよい影響を与えます。
・「不登校ゼロ作戦」など学校復帰を前提とした、子どもや親をおいつめる施策をやめさせ、学校以外の学びの場をきちんと認めます。相談しやすい窓口を拡充するとともに、親の会、フリースクールなどの支援団体や家庭への公的支援をつよめます。子どもの「最善の利益」の立場から、学校復帰より一人ひとりの子どもの学びと人間的自立を優先させ、そのための様々な場での教育にたいし、学校と同等の公的支援をめざします。
▼上からのしめつけをやめ、子どもの権利と教育の自由と自主性を保障します
・先生が子どもの声に耳を傾け、保護者ともコミュニケーションをとりながら、創意工夫しながら教育をすすめる――このことは人間的な教育にとって不可欠な条件です。ところが、長年の自民党型の「教育政策」は、こうした教育の自主性を敵視し、教育を政治の言いなりになるように、上意下達の学校運営を押し付けてきました。しかも東京や大阪では、教育への政治的介入が露骨なかたちですすめられ、「君が代」の口元チェックなど人間性を疑うようなことまでおきています。私たちは、こうした教育への統制をやめ、子どもの権利と教育の自由と自主性を大切にします。
・子どもをしめつけず人間として大切にする学校を
学校は何よりも子どもたちの成長・発達のためにあるものです。ところが行き過ぎた決まりごとや校則、「許容度ゼロ」の容赦ない生徒管理で、子どもをしめつける学校がひろがっています。そうした傾向を克服し、子どもの権利の保障を学校運営の中心にすえます。
・学校の安全対策をすすめます。「学校災害給付」件数は年間200万件に増加し、学校での事故や犯罪から子ども、教職員らの生命を守る仕事は急務です。ところが国の施策は、通達を出すだけの「通達行政」「手引き行政」の枠をでず、学校安全対策はきわめて不十分で「指導死」などの悲しい事件がつづいています。「安全配慮義務」を明記するなど、子どもの「安全に教育を受ける権利」を保障する「学校安全法」「学校安全条例」の制定を支持するとともに、不審者対応を含めた安全対策のための専門職員配置や施設の改善をすすめ、住民の自主的なとりくみを支援します。
・学習指導要領の強制性のない「大綱的基準」とします。現在の指導要領は国の強い関与のもとで一部の考えだけでつくられ、過密カリキュラムで「落ちこぼし」をふやす、内容的にも科学性や系統性に欠けるなど多くの問題をかかえています。にもかかわらず「法的強制力」があるとされ、スピード授業、創造性のない画一的な授業をしいる原因となっています。学習指導要領の内容を、研究者や教職員、保護者など国民参加で抜本的に見直すとともに、その強制性をあらため、戦後直後のように「試案」と明示し、子どもの状況や学校・地域の実情に即した教育課程を自主的につくれるようにします。子どもをふるいわけ、人間として傷つける危険のつよい習熟度別学習の強制に反対します。
・性教育への介入に反対します。性教育は、子どもを人間として大切にしようと、専門家や保護者らの努力ですすめられてきました。ところが、自民党や民主党などの国会・地方議員が、性教育の実践をゆがめて描き、一方的な攻撃をおこない、行政が教材を奪う、不当な処分をするなどの事態がひきおこされました。これらの政治介入は、違法な「教育への不当な支配」だと判決が下りましたが、政治勢力による、マスメディアも動員した性教育バッシングを行うなかで、現場の柔軟なとりくみが萎縮させられています。こうした政治的介入をゆるさず、子どもたちに科学と人権をベースに、体や心の仕組みや発達、性のちがいや多様性などを伝え、自己肯定感情をはぐくむ、自主的な性教育を尊重します。
・子どもを傷つける教員には、子どもの成長する権利を保障する立場から毅然と対処するとともに、問題をかかえる教員の人間的な立ち直りを促す支援を重視し、そのための人員配置などの支援策をとります。「不適格教員」のレッテル貼りや「草むしり」「密室に座らせ続ける」などの「指導力改善研修」は、教員を追いつめるものであり、改善をもとめます。
・教育委員会を住民自治の教育機関として改革します
教育委員会はほんらい教育の自主性を保障するため、一般行政から独立した権限をもち、その意思決定は官僚でなく住民の代表である教育委員の手に委ねられているものです。しかしその制度は形骸化し、国の言いなりに学校をしめつけたり、大津市のいじめ自殺の隠ぺいなど「組織防衛」に走るなど、子ども不在の実態がひろがっています。(1)教育委員たちが保護者、子ども、教職員、住民の不満や要求をつかみ、自治体の教育施策をチェックし、改善する、(2)会議の公開、教育委員の待遇改善や支援、教育への見識や専門性をもつ人物の確保など、教育委員会の役割が実際に果たせる体制をつくる、(3)政治的介入から教育の自由と自主性を守る、(4)憲法と子どもの権利条約の立場にたって行政を行う、(5)教育委員の公選制などの抜本的な改革を国民的合意の下ですすめるという五つの方向で改革をすすめます。
・児童虐待の防止対策を強化します
・格差と貧困のひろがりを背景に、2013年度に全国207か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は73,765件(速報値)で、過去最高を更新しています。児童虐待の防止、早期発見、子どもと親への専門的な支援などの独自の施策をつよめます。早期発見で子どもを守るために、保育所や学校、病院、児童相談所、保健所、子育て支援センター、児童養護施設など、子どもにかかわる専門機関の連携をはかるとともに、職員の専門的な研修をつよめます。相談支援体制を充実させるために、児童相談所の増設、職員の抜本的な増員と専門性向上のための研修の充実、一時保護施設や児童福祉施設の整備増設、設備や職員配置の改善をはかります。虐待を受けた子どもへの専門的なケア、親にたいする経済的、心理・医療的、福祉的な支援をつよめます。
・児童養護施設、里親制度などの整備・拡充すすめます
・経済的、社会的事情をもった親が子育てできない状況におちいったり、予期せぬ妊娠に悩んだ時に、身近に相談できる体制を整備します。
・児童福祉行政の中核的役割を担う児童相談所は全国で207カ所、乳児院は130カ所しかありません。児童相談所や児童福祉施設、小児病院や保健所、子育て支援センターなどが連携して、親が育てられるための支援をつよめるとともに、困難な場合の受け入れ施設の拡充をすすめます。
・児童養護施設などの国の最低基準を旧民主党政権が廃止し、自治体まかせにしてしまいました。国の責任で職員配置や施設整備の改善、小規模化、家庭的養護の推進を急ぎます。施設に暮らす子どもたちの教育、進学への支援をつよめます。里親制度は子どもたちを家庭的環境で育てるために重要な制度です。いっそうの拡充をはかり、里親への支援や研修の充実、制度の周知をすすめます。
6、子どもの権利条約の立場を政治と社会につらぬきます
・今年で日本が子どもの権利条約を批准して25年です。日本政府は、子どもの権利条約を批准国しているにもかかわらず、子どもたちの権利を守る立場にたった施策があまりにも不十分です。過度の競争をあおり、管理をつよめる教育をただちに改善するとともに、子どもたちの声に耳を傾け、子どもの権利を守る社会、人間らしい安定した雇用、社会保障や福祉の充実など、社会全体のあり方を変えて、子どもたちがストレスを抱えて自己肯定感も将来への希望も持てないような事態をなくしていかなければなりません。
・いまほど、子どもの命と健康をまもりぬき、一人ひとりの子どもが真に大切にされる社会、将来に希望がもて、安心して子育てできる社会へ、子どもの権利条約の立場で、子どもと子育てをめぐる問題を見直すことが求められているときはありません。政府と社会が「子どもの最善の利益」のために、福祉、教育、文化、子育て支援の充実を最優先にはかることは、国際的には当たり前のことになっています。子どもの権利条約を社会のすみずみに実現するための国民の共同をひろげます。

社会民主党
・地域に子どもの相談・救済など、子どもの人権擁護の仕組みを。「子どもの権利基本法」を制定。
・虐待による子どもの死亡、居所不明児童・乳幼児の問題なとの深刻化に対応するため、早急に児童相談所の職員配置を拡充し機能強化。
・いじめを許さず、共に学び共に生きる、ゆとりある学校を実現。教育予算のGDP5%水準を実現。子どもの貧困の実態を調査し包括的な取り組みを計画的に強化。さまざまな困難を抱える家庭に対する支援体制を整備。自立支援ホームに対する公的支援を強化。就学援助の保障、給付型奨学金を創設。


担当: 林 寛平
学生: 飯島香純、大木健晴、森下結衣、加地里帆子、山田真由美

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