2015年6月30日火曜日

教育動向: 夏休み中の食事提供プログラムが各地で始動

アメリカの教育動向 (久原みな子)

 全米の学校が夏休みに入るにつれ、各地で子どもたちに夏休み中の食事を提供するプログラムが始動している。貧困層にある子どもたちにとって、学期中に学校で、無料であるいは割引で提供される朝食と昼食が一日の食事の全てである場合もあり、長い夏休みの始まりは、そうした子どもたちにとって飢餓と栄養失調を意味している。2014年度には、全米でおよそ2150万人以上の子どもたちが、そうした無料あるいは割引の給食プログラムを利用可能な低所得世帯の出身であった。
 米国農務省は、夏休み中、こうした子どもたちに食事を提供するプログラム(The Summer Food Service Program)を展開しているが、それを利用している子どもの数は、およそ270万人程度にとどまっており、あまり活用されていないのが現状だ。このプログラムでは、普通、食事が提供される場所に子どもが行き、その場で食事をする必要があるが、多くの低所得家庭では、夏の間子どもたちは家にとどまっており、交通費が捻出できないことも多い。また荒天により提供施設が閉鎖してしまう場合もある。
 農務省のプログラム以外でも、各地の学区、学校、地域の団体が様々なかたちで多くの貧困層の子どもたちに食事を提供するため奔走している。例えば、夏の暑さと交通の不便さが問題になりがちなアリゾナ州のある学区では、低所得層の子どもが夏の間一日を過ごすことの多い地元の図書館や地区センター、学校などで朝食・昼食・おやつ・夕食を涼しい屋内で提供し、それぞれの場所で無料の子供向けの活動・イベントも用意している。コロラド州では、学区のみならず、NPOハンガー・フリー・コロラドなどの団体をはじめ、地元のコミュニティや教会の指導者、ボランティアたちが協力し、連邦政府のプログラムを拡大するとともに、地元に根ざした地道な努力を続けている。5人に1人の子どもが「いつ、どこで、次の食事が食べられるのかわからない」状況にあると言われているコロラド州では、不況の影響が厳しかった2009年に州知事と地元団体が協力し、州内の子どもの飢餓を絶滅するためのキャンペーンが打ち上げられていたが、2014年には、夏の間に提供された食事の数は150万食と、2009年に比べて95%増となった。今夏は、さらに10万5千食を追加することを目標とし、州内533ヶ所で子どもたちに無料で食事を提供している。
 


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