2015年8月11日火曜日

フジテレビホウドウキョクに出演しました

 7月29日(水)21:00ごろから、ネットテレビのフジテレビホウドウキョクの「あしたのコンパス」という番組に電話インタビューで出演しました。7月27日に公表された文部科学省の調査で、苦情対応や報告書への対応を「負担」だと感じる教員が7割に上ったことを受けて、コメントを求められました。

 番組の様子は以下のアーカイブからご覧いただけます。

 http://www.houdoukyoku.jp/pc/archive_play/00042015072901/6/


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文字起こし



古市・石田: こんばんは。

古市: きょうのピックアップ二つ目はこの学校の先生が異様に忙しいんじゃないかっていうちょっと話題をやっているんですけれども。

石田: そうです。文科省で今初調査されて7割が負担と感じてるということなんですけれども。

古市: なんか遅い気もしますけどね。結構Twitterでもきていてやっぱりなんか大変そうだねみたいな意見が多いんですけど、ちょうど石田さんのご両親も小学校の先生ってことでそういうのも大変だって話がいろいろちょっと聞いてきたんですけど。

石田: はい。そうなんですよ。大変だというそうなんです。ではここで生のご意見ということで伺ってまいりたいと思いますが最初は信州大学教育学部助教でいらっしゃる林寬平さんにお話を伺います。
 
古市: 林さんこんばんは。よろしくお願い致します。

林: こんばんは。どうもよろしくお願いします。

古市: 先生の7割が負担を感じているというニュースなんですけれども、やっぱり先生は結構長時間労働なんですか。


林: そうですね。去年発表された国際調査では月あたり53.9時間働いているということで世界で一番長く働いているということが明らかになりました

古市: 世界で一番長いと。ほう。

林: 世界で一番長いというのは中学校での調査だったわけですけど、今回文部科学省がやった調査では小学校も中学校も、また校長先生や副校長先生なんかも入れて調査をしたということですね。

古市: なるほど。それによると労働時間がさっき1日12時間とか家に帰ってからも1時間40分仕事があるとかってことを報じられていましたけれども、そんなやっぱり仕事がたくさんあるものなんですね。

林: そうですね。先ほど番組の中でも仰っていましたが、一般的に「授業3割」というふうに教員の間ではいわれているんです。

古市: 「授業3割」なるほど。

林: 子どもと直接向き合って先生っていうふうにイメージされるような授業というのは本当に学校生活の一部でしかなくて、子どもたちが帰った後も職員室でいろんな書類作業をしたりとか会議をしたりとか、それから学校から出ていって研修を受けたり家庭との連絡調整をしたりとか、地域の方と相談をしたりといういろんな業務が入ってきます。

古市: 先生って昔からこんなに忙しかったんですか。

林: 昔も忙しいは忙しかったと思うんですけれども労働時間が長くなってきたっていう事実あるんですね。昭和41年の調査では月あたり約8時間の残業時間だったんですけれども最近の調査ではこちら週あたり13.9時間っていうことでかなり増えています。

古市: なるほど。かなり増えてますね。これは何で増えた時間なんですか。

林: これは先ほど番組でも言ってたとおり、先生たち昔は学校に授業しにきて授業が終わったら帰るというような形でした。


古市: なるほど。健全というかなんかそういうものかなと思ってたんで。でも今はそうではないんですね。

林: 今はそれ以外の仕事がいっぱい次から次へと入ってきている状態だと思いますね。


古市: なるほど。この残業した分とかその長時間外労働ってこれちゃんとお金はもらえているんですか。

林: それは一つ問題になっているところで、教員は教職調整額という制度がありまして、こちらは一律で4%給料に上乗せされて支給されているんですけど、これがあることによって一般の人が適用される労働基準法の時間外労働の割増賃金が適用されないことになっています。

古市: なるほど。てことはいくら働いてもこの4%って額以上はもらえないってことですか。

林: そうですね。どんなに働いても、学校に残って仕事を熱心にされていても、時間にきっかり帰る先生であっても全く同じ給料しかもらえないということですね。

古市: しかもそれなんですかそれ。部活とかのお金はあれどうなっているんですか。

林: 部活なんかもうほぼボランティアで手当っていっても数百円の手当が付くだけでもちろん最低賃金以下ですし、ちょっとお小遣いっていう程度の手当しか出ないということですね。

古市: 林さんなんかスウェーデンでも教職経験があるとお聞きしたんですけれども。スウェーデンではどんなことをされていたんですか。

林: スウェーデン人の通う学校で小学校と中学校で体育と算数と英語を教えていました。

古市: そうなんですね。スウェーデンと日本と比べてみてどうですかね。そういう学校の現場っていうのは。

林: スウェーデンを含めて世界20数カ国の学校見て回っているんでけれども、これほど熱心に働く先生たちが集まっている国っていうのは日本を置いてほかにないですね。


古市: なるほど。日本は一番熱心であると。

林: ええ。授業のためにきて授業が終わったら帰るというスタイルを今もほとんどの国がやっているということと、ほかの国ではあまり教師の専門性が高くないものですから、いってみたらそこら辺の人がたまたま教師をやっているという感じの場合も多いですね。教員不足が深刻ですので教員になりたいっていう人たちが熱意を持って教職になるという仕事ではなくてどちらかというと「教師にでもなるか」あるいは「教師にしかなれない」からっていうふうに教員になるのが普通という感じですね。なのでOECDが今回のように教員の調査をしたというのは各国で教員不足と人材不足っていうのがあって教職の魅力を高めていかないとそれぞれの国でこの先国が持たないということでどうしたら優秀な人材を教職にいざなえるかっていうことを主眼に置いて調査をしているということです。

古市: なるほど。ただ日本はその点でいうと優秀な人材が教職に集まっているという状況ではきっとあるんですよね。

林: そうですね。ただ社会のひずみとか本当は学校がやらなくていいのに学校しかできないからという理由でいろんな仕事が学校の中に投げ込まれて、結局先生たちがそれを人がいいのでやってしまうんですけれど、それを続けていくと本当に優秀な人たちが教職を目指さなくなって、特にこのような報道がされることによって教員難しい、大変だよね、ていうふうになってくると次第に優秀な人が入ってこなくなって、そうするとあまり優秀じゃない人の集団になるともっと仕事が大変になってどんどん負のスパイラルに入っていってしまうと。

古市: これどうしたらいいんですかね。まずやっぱりお金が足りないとか人材が足りないってことはひとつあるんですかね。


林: そうですね。お金があって教員の数を増やせたらそれが一番早いと思うんですね。今回53.9時間ということは40時間を標準とすると35%多く働いているっていうことになるわけですね。ていうことは本来普通に仕事をしていたら35%教員を増やすかあるいは教員の費用を35%増やして時間外労働にちゃんと報いるかっていうことを考えないといけないんですけれども。

古市: なるほど。そのちゃんとその超過時間分のそのお給料をちゃんとあげるかもしくはその分先生を増やすかということですね。

林: そうですね。そのような対応がなされないで例えば外部人材の活用とかボランティアとかで対応しようとしているっていうところがちょっと危ういかなって感じているところなんです。

古市: 今回はその文科省の報告書ではその提案として外部人材を使いましょうとかボランティアを使いましょうってことが提言されているわけですね。ただそれだとちょっと無理なんじゃないかなってことですよね。

林: そうですね。注意しないといけないのは長時間勤務。「勤務の時間が長い」ということと「多忙である」ということと「多忙化している」ということと「多忙感がある」ということと「負担感がある」ということはそれぞれ違うことなんですよね。

古市: なるほど。今回の調査では「負担感がある」って表現でしたっけ。


林: そうですね。国際調査のほうでは長時間勤務のことが指摘されたわけですけれども今回文科省はそれを受けて先生たちの負担感を調査したということでした。それで負担感を減らすためのガイドラインを出したとのことですけど、内容が結構あべこべになっていて、かみ合っていない面があります。例えば先ほどご紹介あったように国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応が非常に負担感があるといっているんですけどこの調査をしているわけですね。

古市: そうですよね。だからまさに皮肉っていうかそうですよね。この調査のせいで忙しくなっているっていうのにこういう調査をしている。

林: ええ。今このようなことで文科省がやっていますけれども、実は都道府県も同じような調査をしていますし、各市町村の教育委員会も同じような調査をしているんですね。ということは3回同じような調査をやっているという。

古市: なんか1回で済まないですかね。


林: それがなかなか連携が取れていないんですね。そうしようとはしているんですけれど、うまくいってない現状はありますよね。それから例えば保護者地域からの要望苦情への対応に非常に負担感を感じているといいながらこのガイドラインで示されていることはチーム学校ということで地域の人とか専門家とかと連携してそれで対応していきましょうという案が出ているわけですが、それって結構コミュニケーションコストが増えてしまって本来保護者とかからの対応が負担があるといっているのにもっとその道に行ってしまっているような対応策になっていたりとかですね。それからマネジメントを強化するとか研修を強化するっていうことが対応策として書かれているんですけれどももともと負担感が強いと訴えているのはそういうところであって、負担感が強いので、じゃあもっと研修を強化しましょうみたいな報告書になっていまして、これは根本的に認識がおかしいんじゃないかと思うんですね。

古市: こういう報告書とか書く文科省の方ってあんまり教職員の現場とか知らないんですかね。


林: 多分すごく現場に長く居る方が多くて。それでよく分かってらっしゃる方が多いと思うんですけれども、計画的な対応という意味では現場レベルの目線ではちょっと難しいところがあると思うんですね。というのは日本の国内全部で長時間勤務っていうのが問題になっているわけですよね。ある学校だけで長時間勤務が問題になっているのであればその学校で対応すればいいと思うし、ほかに例えば長時間勤務がない教育委員会があったとしたらその教育委員会のいいところを勉強すればいいと思うんですけれども、これ全国で問題になっていることですので国の制度が問題だということですよね。なので誰かの改善とか頑張ろうという努力とかそういうもので改善しようというのはもっと頑張ろうといっているだけの話であって。


古市: そうか。本当は制度を抜本的に変えなきゃいけないにもかかわらずまたその現場の努力でなんとかしようとしているっていう今までのこの負のスパイラルの繰り返しのような調査と報告書になっちゃっているんですかね。

林: そうですね。それでこれまでもこの教職調整額を増やそうとかこの残業に対してきちんと報いようとか仕事の時間を減らせるように何とか系統的に変更しようという議論は常に行われてきたんですけれども、具体的な制度変更には至っていないんですね。

古市: なるほど。これってやっぱり財務省と文科省の折衝の話なのかもしれないですけどやっぱりあんまり教育にちょっとお金掛けられないってことなんですかね。

林: そうですね。また先生方個人の努力で何とかしてしまっているように見えているっていうのもまたちょっと弱いところではありますね。

古市: 確かに日本社会自体が学校に限らずにやっぱり何とか個人の努力で何とかしてしまう。短期的にはうまくいくんだけれども結果的にでもみんなが疲弊してしまうってことは結構どこにでも起こっていることですもんね。

林: そうですね。それで私の専門の国際比較からいいますと教員に長時間労働を課す国というのはどこの国も合法的かつ財政負担なく働かせる制度があるということで長時間労働を減らしたいというのであればこの長時間労働を違法化するということと財政負担を設けるということの二つを動かせば長時間労働はなくなると思うんですね。

古市: 確かにそれって別に本当は法律的な問題だけの話ですもんね本来は。

林: そうですね。ただ今と同じ仕事量で労働時間だけ減らされて規制されるようになったとするとより多忙化するわけですよね。なので時間が長いということと多忙であるということと負担感があるということはそれぞれ違った対処が必要になってくるっていうことですね。

古市: モデルになるいい国とか制度ってなんかありますかね。

林: モデルというと難しいですけどもある意味で日本はこの先生たちの非常に献身的な教育への取り組み質の高い教員ということをもって日本のすばらしい高学力、今OECDの加盟国では世界一なんですけれども。

古市: そうですよね。一時期なんかすごい順位下がったとかって話題になっていましたけど実は今また1位というかすごい成績いいんですよね。

林: そうですね。その好成績はそういう先生方の献身的な取り組みによって支えられている。だからほかの国は日本をモデルとして見ているわけですね。また部活動なんかがとても批判されてブラックだなんていわれることもありますけど、今特に非認知的スキルといわれる例えば豊かな性格とかテストで測れるものではなくて人生を送る上でその後だんだん生きてくるようなものについてもあらためて評価されるようになってきているわけですけど、それが部活動とかが非常に強みになっているんじゃないかというような指摘もありまして。一方で日本の国内から見るとそれが問題だっていわれますけれども海外から見るとそれが日本の強みだっていうふうにいわれているっていう面があるんですね。

古市: なるほど。じゃあいいところを残したまま先生の労働環境がもうちょっと改善されたらいいですよね。


林: そうですね。

古市: そのためには多分本当制度レベルちゃんと変えないといけないんでしょうけれどもどうですかなんかすぐに変わりそうですか。

林: いやあ、これはなかなか難しいと思いますね。教員としてもいろんな教員がおりますし例えば部活動がやりたくて教員になったっていう人も結構多いと思いますね。熱心に子どもと向き合う先生たちの多くは部活動をやりたくて教員になったっていう人が居ると思うんですけど、そういう人たちが居るから自分たちも長時間労働を強いられるんだっていうふうに傍で見ている教員も居ると思うんですね。だから一律に対応しようとすると必ず反発が出てきますし、誰しも学校という世界を経験しているのでいろんな意見がいろんなところから飛び交ってくると。

古市: 確かに。

林: だから「えいやっ‼」とやらないと動かないんですけども、なかなかできない環境は教育の中にはあると思いますね。

古市: なるほど。分かりました。どうも林さんお忙しい中ありがとうございました。


林: ありがとうございました。失礼致します。

古市: というわけで林寬平さんにお話を聞いてきたんですけれども、でも確かにそうですよね。一個の学校だけがこういう問題に苦しんでいるんだったらそこの学校に対してこういうふうにやってくださいって言えば済むけれども全部の学校が長時間労働だったりとかいろんな問題がある中でこうやってくれっていってやるのはでも無理で本当制度を変えなきゃいけないにもかかわらずそうはなってないっていうのはまさにそのとおりですよね。

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